東京都の太陽光義務は、住まい手ではなく供給事業者にかかる
東京都の太陽光義務化は2025年4月施行。年2万㎡以上を供給する事業者に、1棟単位ではなく年間合計でかかります。キャップ&トレードは第四計画期間で50%です。
2025年4月1日に施行された東京都の「太陽光義務化」は、海外では新築住宅に太陽光パネルを義務づける制度として紹介されました。実際の条例はそうなっていません。そこが面白いところです。
義務を負うのは建物供給事業者です。東京都は、その事業者が1年間に都内へ供給した建物の合計で測ります。1棟ずつ判定する制度ではありません。世田谷で新築を買う人は規制の対象ではありません。
制度の形
根拠は建築物環境報告書制度です。都民の健康と安全を確保する環境に関する条例の改正(令和4年12月22日公布、条例第141号)により創設され、令和7年4月1日から施行されました(東京都環境局)。
対象は特定供給事業者、つまり1棟あたり延べ面積2,000㎡未満の中小規模特定建築物を都内で年間2万㎡以上供給する事業者です。都内の新築は年間およそ5万棟。うち98%(約4万9千棟)が2,000㎡未満で、延床面積では52%にあたります。2,000㎡以上は従来の建築物環境計画書制度が受け持ちます(東京都環境局)。
義務は五つです。断熱・省エネ性能の確保、太陽光発電設備等の設置、電気自動車充電設備等の設置、施主や購入者への環境性能の説明、そして基準適合状況の報告。報告書は翌年度9月末までに提出し、都が内容を公表します。
事業者単位の年間基準
再エネ利用設備の設置基準は事業者単位で置かれています。
再エネ設置基準(kW)= 年間の設置可能棟数 × 算定基準率 × 棟当たり基準量(2kW/棟)
設置可能棟数は、年間の供給棟数から算定除外可能建物を引いたものです。たとえば、算出対象の屋根面積が20㎡未満なら除外できます。ほかの除外条件は制度資料に記載されています。北面の屋根は算出対象に入りません。算定基準率は太陽エネルギーの利用適性で85%・70%・30%の三区分、または都内一律85%も選べます。除外した建物も断熱・省エネと充電設備の基準には適合が必要で、外れるのは再エネ設置基準だけです(制度概要説明資料、令和6年11月)。
八王子の南向きの屋根に大きく載せ、中野の日陰の狭小地には載せない。それで基準は満たせます。屋根の物理を制度に織り込んだ設計です。
東京都の省エネ基準は、国の住宅トップランナーと同じ水準を都内供給分の平均に適用します。福岡で建てた住宅は東京の平均に入りません。
他の自治体で見えた初期の動き
自然エネルギー財団は2026年1月26日、太陽光の設置義務化を導入した5自治体を対象とする報告書を公表しました。同じ2025年4月に義務化を始めた東京都と川崎市では、新築住宅の5割が義務化の対象になります。川崎市が義務化前に太陽光を導入した住民に行った調査では、回答者の9割が満足と答え、最大の理由は光熱費の削減でした。集合住宅への導入の遅れは、より広い課題として挙げられています(自然エネルギー財団)。
続く自治体もあります。京都府・京都市と群馬県は工場や倉庫など大規模建物を対象に義務化し、京都府は導入目標を上回りました。仙台市は2027年4月から新築住宅に太陽光と高断熱を義務づける条例を施行予定、長野県は2028年度から大規模新築建物を対象とする方針です。
初年度の報告対象は2025年度です。提出期限は2026年9月末でした。東京都はまだ結果を公表していません。
もう一つの都の制度、いま第四計画期間
既存建物への規制は、東京都のほうがずっと長い実績を持っています。総量削減義務と排出量取引制度(キャップ&トレード制度)は2010年4月に始まり、年間の原油換算エネルギー使用量が1,500kL以上の事業所、約1,200事業所が対象です。オフィスビル、商業施設、官公庁、宿泊、病院、工場が並びます。
削減義務率は計画期間ごとに上がります。基準排出量は原則2002年度から2007年度までの連続3か年度平均です。
- 第一計画期間(2010〜2014年度)8%または6%
- 第二計画期間(2015〜2019年度)17%または15%
- 第三計画期間(2020〜2024年度)27%または25%
- 第四計画期間(2025〜2029年度)50%または48%
高いほうがオフィスビル等と熱供給事業所、低いほうが工場・上下水施設・廃棄物処理施設等、および他人から供給された熱の割合が20%以上のオフィスビル等です(東京都環境局、2026年3月11日)。
履行手段は、自らの省エネ、自らの再エネ導入、低炭素な電気・熱の利用、排出量取引、前計画期間からのバンキング。未達成の場合は義務不足量の1.3倍の削減命令が出され、命令違反には罰金と違反事実の公表が続きます。
2024年度の速報値では、対象事業所の排出量は合計1,142万トン、基準排出量比31%減。夏の猛暑と中間期の気温上昇があった年の数字です。第三計画期間5年間の削減量は約2,643万トン。自らの削減対策等で義務を達成する見込みの事業所が78%、困難な見込みが22%でした。
第四計画期間では、電気と熱の排出量算定が供給事業者ごとの実排出係数に移りました。購入先によって遵守量が変わります。都内のビルオーナーとテナントは、系統と蓄電池の制約が何を買えるかを決める市場に入ります。
東京都制度と国制度の役割分担
国の制度は後から来て、別のところを狙っています。GX-ETSは2026年4月に義務的段階へ入り、直近3か年平均の直接排出量が10万トン以上の法人を対象とします。規律するのはScope1です。
そこで義務が重複しました。改正GX推進法の第76条は、国制度対象事業者に対して条例が定められる事項を二つに限定列挙しています。排出量の実績の報告に関する事項と、他人から供給された電気または熱を使用する場合のCO2排出に関する事項です。条例による直接排出(Scope1)の規制は、法律に抵触する可能性が高いと整理されました。
都の対応は、国制度対象事業者のScope1を都の義務対象から外し、残るScope1とScope2は引き続き義務対象とする、というものです。該当しそうな事業所は約1,200のうち約100事業所、事業者数で約30。その多くは事務所や商業施設で、Scope1の一部だけが国制度に含まれます。
これから変わること
東京都のキャップ&トレード制度の対象事業所には、基準排出量比50%または48%の削減義務があります。基準年はおよそ20年前です。低炭素の電気を買うか、建物と設備を改修する必要があります。
住宅供給事業者は都内平均の仕組みを確認する必要があります。国の基準を地域の供給に適用する方法です。仙台市と長野県も建築物の制度を進めています。
公表される報告は、建物改修の計画にも使えます。
東京都のキャップ&トレード制度は2010年から対象事業所を計測しています。Tech for Impact Summit 2027 は2027年5月18〜19日、東京で国連大学と共催します。招待制のサミットです。tech4impactsummit.com/apply からウェイトリストにご登録ください。