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日本のSAF供給義務は2030年度の1%から始まる

日本のSAF供給義務は7空港の国際線給油量が基準で、2030年度1%、2032年度5%。よく引かれる10%は別の目標です。

Steel storage tanks and process piping at a fuel plant under an overcast sky

2026年7月23日に示された供給義務案は、2030年度1%です。よく引かれる10%は、航空会社の燃料使用量に対する2023年の政策目標です。

10%とは何だったのか

10%は2023年2月のGX基本方針にある目標で、資源エネルギー庁は「2030年時点で本邦エアラインによる燃料使用量の10%をSAFに置き換える」と記しています(資源エネルギー庁)。対象は航空会社の燃料使用量であり、燃料を供給する側の義務ではありません。

同じページ(2024年11月公開)には、高度化法において2030年の目標量を「2019年度に日本国内で生産・供給されたジェット燃料のGHG排出量の5%相当量以上」と設定する予定、とも書かれています。基準が排出量ベースのこの案は、その後置き換わりました。

実際に設計されているもの

2026年7月23日、国土交通省と資源エネルギー庁は第9回SAF官民協議会を開催しました(国土交通省)。ここで示されたのが、高度化法に基づくSAF供給義務の案です(資源エネルギー庁資料)。

義務がかかるのは、対象空港でジェット燃料を年3,000kL以上供給する事業者で、輸入事業者も含みます。ジェット燃料供給事業は同法の「特定エネルギー供給事業者が行う事業」に位置づけられます。義務率は2030年度が1%以上、2031年度が3%以上、2032年度から2034年度が5%以上です。

基準となるのは、国際線向け給油量の上位7空港(成田、羽田、関西、中部、新千歳、福岡、那覇)における国際線の給油量で、旅客便と貨物便の双方が対象です。第一次告示期間にあたる2030〜2034年度は国内線を除きます。対象燃料はCORSIA認証を受けたSAF(CEF)に限られ、国産・輸入の双方が含まれます。LCAFは現時点で対象外です。

義務率はSAFの供給量で判定します。GHG排出量の削減率ではありません。罰則は高度化法の枠組みで対応し、所管は経済産業省です。事業者は達成状況を対象空港別に年度ごとに報告します。

投資判断を左右する一文

各論のなかで、プラントを建てる側にとって最も重い条項がこれです。年間10万kL以上のジェット燃料を供給する国内製造事業者は、そのSAF供給量のうち50%分を国産SAFまたは海外連結子会社産SAFにしなければならない(資源エネルギー庁資料)。

この条項がなければ、義務は海外調達だけで満たせます。国内に設備を建てる理由は生まれません。50%が入ることで、大手の義務量の半分は自社グループの資産から出さざるを得なくなります。燃料の調達問題が、設備投資の問題に変わります。

数字を並べてみる

2024年度の国際線給油量は817万kL、うち上位7空港が約99%を占めます。成田が314万kL、羽田が295万kLです(国土交通省資料)。1%は約8万kL、5%は約40万kLになります。

国内初の大規模国産SAF製造設備は、コスモ石油堺製油所構内のSAFFAIRE SKY ENERGYで、2024年12月に完工、年間約3万kLを国産廃食用油から製造する設計です(コスモエネルギーホールディングス)。年間生産量の全量を充てても、2030年度の必要量の3分の1ほどにとどまります。

設計中のプロジェクトはこれより大きく、出光興産(山口・千葉)、ENEOS(和歌山)、太陽石油(沖縄)、コスモ石油(香川)の4社で合計約110万kL/年です(同資料)。5%の水準は数字の上では十分に上回ります。

同資料は、2030年に国産SAFを本格供給するには2026年中の最終投資決定が必要だとしています。元売は売買契約が見えない段階で投資を決めにくく、航空会社は国際競争力のある価格を求めます。義務化の案は、この契約と投資の停滞を動かすために設計されています。

原料も見ておく価値があります。4社の設備ではATJ(アルコール・ツー・ジェット)が多数を占め、堺のHEFA・廃食用油ルートは一部にとどまります。国産原料の回収拡大と海外産原料の確保が別立ての施策になっていることと合わせると、5%の義務量を国内の廃食用油だけで支える想定にはなっていない、と読めます。

認められない理由

案は、目標を下方修正できる場合とできない場合を具体的に列挙しています。グループ会社間の調整は可能で、災害等のやむを得ない事由は下方修正の対象になります。装置トラブルや航空事業者との取引不調は理由として認められません。建設費の高騰でプラントを中止・延期した場合も対象外です。

未達分は翌年度に繰り越せます(2033年度まで)。繰り越し分には、非CORSIA対象航空会社や自家用ジェット機、自衛隊・海上保安庁等の官公庁機、在日米軍等の外国政府機、輸出分、他の供給事業者への販売分を充てられます。認められている調整は、いずれも時期に関するものです。

誰が負担するのか

7月の議論のもう半分は、費用の出どころでした。2026年4月に立ち上がった有識者会議(座長・山内弘隆一橋大学名誉教授)が支援の仕組みを検討しており、その方向性が別紙に示されています(国土交通省別紙)。

供給義務の開始と歩調を合わせ、2030年度を念頭に、拠点空港で国際線用にSAFを給油する航空会社へ数量に応じた支援を行う案です。財源は、拠点空港を出発する国際線の旅客と貨物から、飛行距離に応じて求めます。自主的な給油分も支援対象です。2035年度をめどに国内線や他空港への拡張を検討します。

規模感として、国土交通省の比較では、東京〜欧州のエコノミー1人あたり、欧州系航空会社のSAFサーチャージが約1,464円、燃油サーチャージが約65,000円です(国土交通省資料)。金額としては燃油サーチャージの2%程度で、政治的な難しさはその比率とは無関係です。

いま確定していないこと

以上はまだ法令ではありません。2026年7月23日の協議会に示された案です。実際に効力を持つのは高度化法に基づく告示であり、それが出るまでは何も確定していません。1%を現行制度として語ることは、10%を義務として語るのと同じ種類の誤りになります。

元売各社には最終投資決定が残っています。告示で50%の国産条項が維持されるかも未確定です。旅客負担の仕組みは航空・旅行業界との調整が必要です。需要側の支援がなければ、航空会社が費用を負担します。

GX-ETSは2026年4月1日に義務化されました。水素・アンモニア戦略では差額支援の制度設計が進みました。SAFについては、供給義務を定める告示がまだ出ていません。


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