省エネ法の定期報告にデータセンター業の表。目指すべき水準はPUE1.4
2026年度版の記入要領に特定-第8表が加わりました。情報処理設備と付帯設備の電気使用量、非化石電気の割合、PUE、稼働率。目指すべき水準1.4の意味を整理します。
資源エネルギー庁は毎年、大口のエネルギー使用者に向けて報告書の記入要領を公表しています。2026年度版の日付は2026年4月6日です。前年度版からの主な変更点は四行しかありません。その一行目に、データセンター業の報告様式が加わりました(資源エネルギー庁・2026年度版記入要領、掲載元は支援ツールのページ)。
日本がAIの電力需要を測る仕組みは、この様式の中にあります。既存の定期報告書に、表が一つ加わりました。
誰が、いつ出すのか
根拠法はエネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律、昭和54年6月22日法律第49号です。2023年4月の改正で、非化石エネルギーが対象に入りました。原油換算で年1,500kl以上を使う事業者が特定事業者に指定され、実際に使った量を書く定期報告書と、これから何を変えるかを書く中長期計画書を提出します。提出期限は毎年度7月末日です(資源エネルギー庁・改正省エネ法パンフレット)。
新しい様式は特定-第8表、「データセンター業のエネルギーの使用の状況等」です。備考は、データセンター業における年度のエネルギー使用量が原油換算1,500kl以上の事業者を対象としています。
この表は事業を三つに分けます。分け方は、ある1kWhを誰が数えるのかを決めるので、定義を丁寧に読む価値があります。
ハウジング型は、自らの建物や室に用意した設置場所と設備を他の者に提供する事業で、英語でいうコロケーションにあたります。これに対してホスティング・クラウド(オーナー)型では、設置場所も情報処理設備も自社で保有したうえで、処理の機能を提供します。テナント型になると、設置場所は他の者から提供を受け、情報処理設備だけを自ら保有する形になります。
複数に当てはまる事業者は、それぞれ別に記入します。テナント型の情報処理設備の電気は、テナント側の報告に乗ります。その周りの付帯設備の電気は、建物側の報告に乗ります。
この割り当ては、比較的最近変わったものです。令和5年度の定期報告より、オーナーはテナント持込機器以外のすべてのエネルギー使用量を算入し、テナントは自身が専有している部分を算入することになりました。それ以前は、事業形態にかかわらずオーナーが算入する扱いでした。テナント専用部が計量されていない場合、記入要領はオーナーに合理的な手法での推計と情報提供を求めており、それがない場合はテナント側が推計します。
クラウドを使う側に、この報告は来ません。記入要領は、ホスティング・クラウド(オーナー)型事業者のIT機器等の利用者について、エネルギー使用量の算入は不要としています。算入するのは事業者側です。
ここで一つ、見落としやすい注意書きがあります。いま述べた算入の区分は、報告全体についてのものです。記入要領は、特定-第8表においてはエネルギー使用量の算入区分が異なる、と別に書いています。全体の使用量を決める区分と、データセンター業の表を埋める区分は、同じではありません。
何を書くのか
様式はまず、契約電力と最大受電容量を求めます。単位はどちらもkWです。
続いて電気使用量をkWhで記入します。情報処理設備の分と、それを冷やして電気を届けている付帯設備の分は、別の行に書きます。総量はその下の行です。
この三行のそれぞれの横に、小さな欄があります。「うち、非化石電気の割合 %」。その電気のうち、非化石由来がどれだけかという数字です。情報処理設備の分と付帯設備の分を、別々の数値として書きます。建物でまとめて一つ、ではありません。
この分け方が、実務では手間のかかるところです。サイト全体で非化石電気のメニューを一本契約し、メーターの数字から割合を一つ出している会社は、様式が求めている形を持っていません。
電気のあとにPUEの値が来ます。事業者平均と、事業区分別の平均の両方です。さらにエネルギー消費原単位と対前年度比、5年度間の平均変化、そして稼働率を記入します。
目指すべき水準は1.4
この法律の中には、ベンチマーク制度が置かれています。業種ごとにベンチマーク指標と目指すべき水準が決まっています。高炉による製鉄業は粗鋼量当たり0.531kl/t以下です。ホテル業は、同じ規模とサービス、稼働状況のホテルの平均的なエネルギー使用量と比べた値で測られます。ショッピングセンター業は延床面積当たりで見ます。
区分16がデータセンター業です。指標は当該事業を行っているデータセンターにおけるPUEの値で、目指すべき水準は1.4以下とされています。
PUEは、施設全体の電気使用量を情報処理設備の電気使用量で割った値です。1.4なら、計算そのものに使う電力の4割ほどが上乗せになっている計算で、その多くは冷却です。小さいほうが良い指標なので、1.4を上回った状態が未達にあたります。
上回った場合の扱いは、特定-第7表 1-2の記入要領に書かれています。当該年度の指標を目指すべき水準と比較する等の分析を行ったうえで、対象となる事業所名、未達の理由、当該事業者が抱えている事情等を記入することになります。
この記入に罰則はついていません。書かれたものは定期報告書の一部として役所に提出されます。会社が開示制度に宣言すれば、その報告情報を国が公表します。開示制度は令和6年度から本格運用に入っています。
屋根は2027年度報告から
変更点の二行目は、屋根設置太陽光発電設備の様式を特定-第10表と指定-第8表に加えるものです。四行のうちこれだけが【2027年度報告から】と書かれているので、今年度ではなく翌年度の報告から始まります。
記入するのは、設置済みの屋根面積と、設置が可能な屋根の面積です。ただし、他の構造物が載っている部分は、この面積から除きます。特定用途に日常的に使っている部分や、他の法令で設置が認められない部分も同じ扱いです。そのうえで一つの割合を出します。条件を満たす屋根の合計面積のうち、設置済みがどれだけを占めるかという数字です。
この割合を出すには、自社の屋根面積を条件ごとに調べておく必要があります。
日本のデータセンター政策の中での位置
日本の計算能力は、理由のある場所で伸びています。風力の近くに計算を置くための北海道のクラスターとHVDCについては別に書きました。新設がどれだけ早く系統につながるかを左右する接続の待ち行列も扱っています。2026年4月に義務化の段階に入ったGX-ETSは、大規模排出者の排出に価格をつけます。
報告様式が集めるのは、それらが集めていない数字です。年度ごとに、情報処理設備と付帯設備の電気使用量が、非化石電気の割合とあわせて記録されます。建物がどれだけ埋まっていたかは、稼働率が示します。閾値を超える事業者から集まれば、計算効率の全国像ができます。いま誰も持っていない数字です。
1.4という水準の隣にも、報告された数値が並ぶことになります。この表ができるまで、法律に基づいて集められたPUEはありませんでした。
事業者がいま確かめること
最初に決まるのは境界です。自社が三つの事業区分のどれにあたるか、複数にまたがっていないかで、どの電気が自社の報告になり、どれが相手方の報告になるかが決まります。次に見ておきたいのは、非化石電気の割合が二つの数値として存在しているかどうかで、様式は情報処理設備と付帯設備を分けて求めています。PUEは仕様書の設計値ではなく、サイトごとに年間で測った値を探すことになります。屋根については、様式が尋ねてくる一年前に調べておけます。
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