暗号資産は金商法へ。20%分離課税は施行翌年から
暗号資産取引は資金決済法から金商法へ。令和8年法律第64号の施行日程と、20%分離課税が適用される条件を整理します。
2017年以来、日本の暗号資産規制は資金決済法の上に置かれてきました。その置き場所が変わります。2026年7月23日、「金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律」が令和8年法律第64号として公布されました。暗号資産取引に関する規制は資金決済法から削除され、金融商品取引法の中に移ります(参議院・議案審議情報)。
金融庁がこの方向を示してから2年が経ちました。法律になった今、実務で効いてくるのは施行日程です。この法律には施行期日が二つあり、税率の話は遅いほうにぶら下がっています。
国会での経緯
内閣提出法案として第221回国会に提出されたのが2026年4月10日。衆議院財務金融委員会が6月10日、本会議が6月11日に可決。参議院財政金融委員会が7月14日、本会議が7月15日に可決し、7月23日に公布されました(参議院)。
金融庁はこの法律を、暗号資産、サステナビリティ情報の開示・保証、スタートアップへの資金供給、不公正取引規制の四つをまとめて整備するものと説明しています(金融庁・国会提出法案)。四つが一本の法律に入っているため、自社に関係する部分だけを読んで他を見落とす、ということが起こりやすい構成です。
暗号資産について何が変わるか
参議院の議案要旨には、暗号資産に関する情報公表制度が書かれています。暗号資産の売買を業とする場合、金融商品取引業に含まれます。特定暗号資産の募集・売出しと暗号資産の貸付けも金融商品取引業の対象です。一定の暗号資産取引業者が取り扱う銘柄にはインサイダー取引規制が入ります。資金決済法からは暗号資産取引の規制が削除されます。
暗号資産は有価証券にはなりません。金融商品として別の枠に入るため、インサイダー取引や開示の条文も新たに書き起こされています。ステーブルコインは2023年からの電子決済手段の枠組みに残ります。この点はプログラマブルな円についての記事で扱いました。
施行日が二つある
暗号資産関係の規定と資金決済法からの削除は、公布の日から1年を超えない範囲内で政令が定める日に施行されます。外側の期限が2027年7月23日で、それより前の確定日はまだありません。
もう一方は日付が決まっています。2027年4月1日から、一定の上場会社が特定非財務情報を開示する場合、一般に公正妥当と認められる作成基準に基づく開示と、その情報に係る監査証明の取得が義務づけられます。監査証明業者の登録制度も同じ日に始まります。特定投資家向けの私募等の勧誘対象者の拡大と、有価証券届出書の提出免除基準の1億円から5億円への引上げも、この日からです。
暗号資産を保有し、かつサステナビリティ情報を開示する上場会社は、一本の法律の中で二つの時計を見ることになります。保証義務のほうが日付が固く、しかも近い。何が問われるのかは2028年の保証義務についての記事に書いています。
20%が適用されるのは、登録された経路だけです
税制は別の法律です。令和8年度税制改正の大綱は、居住者等が暗号資産取引業を行う者に対して特定暗号資産を譲渡した場合の譲渡所得等について、他の所得と分離して20%(所得税15%、個人住民税5%)の税率で課税すると定めています(財務省)。特定暗号資産とは、金融商品取引業者登録簿に登録されている暗号資産のことです。所得税法等の一部を改正する法律は2026年3月31日に成立・公布されました(財務省)。
大綱の中で効いているのは、税率そのものより次の三点です。
適用は、金融商品取引法の改正法の施行の日が属する年の翌年の1月1日以後の譲渡等からです。施行が2027年中であれば、20%が適用される最初の譲渡は2028年1月1日以後のものになります。
特定暗号資産の譲渡損のうち控除しきれない額は、一定の要件のもとで翌年以後3年間の繰越控除ができます。特定暗号資産に係るデリバティブ取引は先物取引の雑所得等の特例の対象に加わり、特定暗号資産を投資対象とする投資信託の受益権は一般株式等と並びます。
そして特定暗号資産に当たらない暗号資産の扱いは、これまでより厳しくなります。総合課税の譲渡所得の基因となる暗号資産については、譲渡所得の特別控除が使えなくなります。5年を超えて保有した資産の2分の1の措置と、他の総合課税所得との損益通算も、大綱は適用しないとしています。総合課税の所得税率は最高45%です(国税庁)。住民税はこれに加わります。
登録された銘柄を登録された業者を通じて売れば、税率は20%になります。同じ銘柄を別の場所で売った場合の計算は、これまでより不利です。
暗号資産取引業を行う者には、取引を行った居住者等の氏名・住所・個人番号と銘柄等を記載した報告書を、翌年1月31日までに税務署長へ提出する義務も課されます。この報告があるから20%が運用できる、という関係です。
上場企業の暗号資産保有はどう変わるか
これまで日本で暗号資産の保有が論じられるとき、話題は会計と税務でした。ここに市場行為の論点が加わります。
登録業者が取り扱う暗号資産には、インサイダー取引規制がかかります。その銘柄を売買する上場会社は、社内の重要情報を管理しなければなりません。発行や募集・売出しには、暗号資産の情報公表制度も適用されます。
やるべきことは地味です。まず、自社が持っている銘柄のうちどれが登録簿に載っているかを確認してください。税務も行為規制もそこで分かれます。あわせて、社内で重要事実に当たる情報を誰が持っているのかを整理しておくと、後の判断が速くなります。参照する法律は金商法になります。
Web3の起業家にとって
上記の事業を日本で行う場合、金融商品取引業者の登録が必要になります。適用される規則と登録要件も変わります。
トークンを発行するのであれば、まず読むのは情報の公表制度です。登録の外側で作るのであれば、利用者の税務上の立場が登録された場所より不利になることを前提にしてください。それは法務の相談より先に、獲得の数字に出ます。
2026年時点の日本の暗号資産規制に、金商法上の登録と情報公表が加わります。行為規制も追加されます。
まだ決まっていないこと
施行日を定める政令はまだ出ていません。それが出るまで、税制の適用開始日は推定です。2028年1月1日を前提にした計画は、2027年中の施行を前提にした計画でもあります。
特定暗号資産の登録簿にどこまでの銘柄が載るかで、20%が届く市場の範囲が決まります。登録が狭ければ、この改正は見出しより小さいものになります。詳細な行為規制は内閣府令と監督指針で書かれます。実務のコストが決まるのはそちらです。
施行日前に必要な登録を確認してください。対象銘柄を洗い出し、社内で誰が重要情報を持つかも確認してください。
Tech for Impact Summit 2027 は2027年5月18〜19日、東京で国連大学との共催で開催します。日本の起業家と投資家は、政令が定める施行日と登録対象の銘柄を確認する必要があります。招待制のサミットです。tech4impactsummit.com/apply からウェイトリストにご登録ください。