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北海道のデータセンターは、出ていけない電力の上に建っている

苫小牧・石狩・千歳に負荷が集まったのは、本州へ渡す200万kWの海底直流送電がまだないからです。系統の形が立地を決めた例として読みます。

Rows of cooling fans in a data centre server hall

電力広域的運営推進機関(OCCTO)は毎年1月に10年先までの需要想定を公表します。2025年1月22日公表の「全国及び供給区域ごとの需要想定(2025年度)」は、2024年度と2034年度を比べたとき、データセンター・半導体工場の新増設の個別計上によって需要が特に増えるエリアとして、北海道・東京・中国の三つを挙げました(OCCTO)。

東京はわかります。北海道が並ぶのは、少し前まで考えにくいことでした。北本連系設備一本で本州とつながる系統であり、同じ資料の業務用の記述は札幌市街地再開発やリゾート開発であって、計算基盤ではありません。北海道がこの三つに入っているのは、2023年以降にそこへ置かれたものと、まだ敷かれていないケーブルのせいです。

全国の個別計上値は、2025年度の最大需要電力56万kW・需要電力量36億kWhから、2034年度には715万kW・514億kWhになります。うちデータセンターが616万kW・440億kWhです(同資料)。北海道はこの伸びを、小さな母数の上で受けることになります。

何が建っているか

Rapidusは2023年2月28日に千歳市を次世代半導体工場の建設地として選定しました(北海道)。2025年7月には2nm世代のGAAトランジスタの試作に成功し、量産目標は2027年です(Rapidus)。半導体政策そのものはラピダスの2nmで書きました。

ソフトバンクは2025年4月に苫小牧でAIデータセンターの起工式を行い、2026年度の開業を目指しています。将来的に敷地面積70万平方メートル、受電容量300MW超まで拡大し、道内の再生可能エネルギーを100%利用する地産地消型として運用する計画です(ソフトバンク)。

石狩ではさくらインターネットが2011年11月からデータセンターを運用しています(石狩市)。2024年4月には生成AI向けクラウド基盤を2027年内に合計18.9EFLOPS(半精度)まで拡張すると発表しました。既設の約2,000基に約8,000基のGPUを追加する1,000億円規模の計画で、経済安全保障推進法に基づくクラウドプログラムの供給確保計画として経産省の認定を受けています(Impress)。

石狩のサーバールームは外気冷房です。北海道の冷涼な外気でそのまま冷やす(石狩市)。2011年に石狩を選んだ理由がこれで、今も電力使用量を抑える具体的な手段です。300MW級の設備では、外気温が冷却電力を左右します。

Rapidus、ソフトバンク、さくらインターネットは別々の場所を選びました。いずれも利用者との距離より、電力と冷却を優先した選択です。

想定そのものへの留保も一つ書いておきます。OCCTOはこの個別計上を現時点の申込状況から積み上げており、資料の脚注は2031年度を境に伸びが減ること、将来の申込動向で変わり得ることを明記しています(OCCTO)。系統への接続申込は賃貸借契約ではありません。715万kWのうちいくらかは、事業者が押さえているオプションです。

南への一本

北海道と本州を新たな海底直流送電で結ぶ方針は、2022年12月22日のGX実行会議で示され、2030年度を目指して整備することとされました。北海道知事は同じタイミングで、広域機関の検討案として北海道と本州を結ぶ送電ルート新設に2.5兆〜3.4兆円、道内の系統増強に1.1兆円という投資規模を記録しています(北海道)。日本海ルートの想定容量は200万kWです(Team Sapporo-Hokkaido)。

日本海ルートの実施主体と4社が指定されたのは2025年2月26日です。北海道電力ネットワークは、この長距離海底ケーブル敷設に国内の前例がないと説明しています(北海道電力ネットワーク)。実施案の提出期限は、資金調達の難しさから2025年末から2026年末へ延期されました。国全体の系統整備マスタープランは6〜7兆円規模です(Nagasawa & Associates)。

実施案はまだ提出されていません。長距離海底ケーブルにも国内の施工実績がないため、2030年度の目標には工期のリスクが残ります。

だから負荷が北へ動いた

新しい送電線が遅れているため、大口需要家が北海道の発電地へ近づいています。

発電側は具体的です。石狩湾新港洋上風力発電所は2024年1月1日に商業運転を開始しました。総出力112,000kW、単機8,000kWのSiemens Gamesa製風車14基、着床式で、18万kWhの蓄電池を備えた変電所を介して送電します(JERA)。データセンターはその近くにあります。

区域の指定も進んでいます。2023年5月12日、石狩市沖・岩宇・南後志地区沖・島牧沖・檜山沖・松前沖の5海域が有望な区域に選ばれました(北海道)。うち松前沖と檜山沖は2025年7月30日に促進区域に指定され、想定出力はそれぞれ約25〜32万kW、約91〜114万kW、いずれも着床式です(Wind Journal)。

二つの海域で約1.2〜1.5GW。これを道内で使い切るか、1,000キロ南へ送るかの二択です。日本の洋上風力が入札制度の作り直しを迫られた経緯を踏まえれば、この海域の採算も楽観はできません。それでも資源の位置と全国の負荷の位置がずれていること、そしてケーブルが未完成の間は併設が最も安い答えであることは変わりません。

語られ方が足りない制約

300MW級のキャンパスは、24時間365日ほぼ一定の電力を引きます。冬の日本海側は風が強い一方、風力発電の出力は変動します。18万kWhの蓄電池は、300MWの負荷なら計算上36分分です。

泊3号機は、道内の供給力に91.2万kWを加えます。2009年12月に営業運転を開始した加圧水型軽水炉です(北海道電力)。原子力規制委員会の設置変更許可が2025年7月30日、知事の同意表明が2025年12月10日、国への同意回答が同年12月18日でした(北海道)。

この1基は、松前沖と檜山沖の洋上風力計画の合計と同程度の規模です。泊3号機と北本連系設備が電力を安定させます。道内の再エネは契約で調達されます。

蓄電池も系統への接続容量を必要とします。その接続待ちは系統接続の待ち行列で書きました。

これから変わること

北海道から東京までの通信には時間がかかります。その代わり、道内の電力を使えます。その電力と需要を結ぶ契約が必要です。

計画中の送電線は2.5〜3.4兆円かかります。北海道に大口需要が増えるたびに、南へ送る必要のある電力は減ります。送電線が完成する前に、その使われ方が変わります。


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